50歳時点で約50%の人が程度の差はあれ男性ホルモン型の薄毛(AGA)でハゲていくといいます。そんな状況で食べ物やサプリメントなどの栄養素で改善できないかと考えるのも当然だと思います。
医学論文で調べると比較的抜け毛や薄毛を改善する効果が期待できる栄養素があります。研究では、栄養不足になると髪の毛の成長が止まって抜け毛が増えたり、男性型脱毛症(AGA)、女性型脱毛症、円形脱毛症の潜在的な関連性も報告されています。この記事では科学的に育毛に効果が期待できる栄養素を紹介します。
目次
薄毛やハゲに効果が期待できる栄養素
タンパク質
髪の毛の中心はらせん状にねじれたタンパク質のケラチン繊維でできています。髪の毛のケラチンは毛髪の弾力性に関係しますのでケラチン繊維がしっかりしているとピンと立つ髪の毛になります。そのケラチンが作られるためには材料が必要です。その材料としてシステインとメチオニンが使われます。毛髪の成長速度や毛を太くするためにもシステインが十分なくてはなりません。
抜け毛は皮膚内に髪の毛が保持できなくなると起こります。この髪の毛を皮膚に維持することに影響を及ぼすのが必須アミノ酸のL-リジンです。さらにL-リジンは後で説明する亜鉛と鉄の吸収に必要です。
脂質
角質層が作り出すセラミドやリン脂質などの脂質が不足すると髪がパサパサに乾燥したり脱毛の原因になります。リノレン酸やリノール酸や長鎖脂肪酸は角質層の原料で、これらの脂肪酸が不足すると抜け毛の原因になります。リノール酸(オメガ-6脂肪酸)やα-リノレン酸(ω-3脂肪酸)などの多不飽和必須脂肪酸の不足は髪の毛にも影響があります。
これらの多価不飽和脂肪酸が不足すると、髪の毛だけでなく眉毛も薄くなっていきます。なぜなら不飽和脂肪酸はAGAの育毛成分であるフィナステリドと同様に5αリダクターゼの阻害によって男性ホルモンの薄毛作用を調節することができるからです。
炭水化物
糖質は皮脂分泌を増やします。ただ皮脂自体は天然の整髪料で酸化しにくいワックスエステルでできているため髪の毛にとって良いのですが、多すぎるとアクネ菌の繁殖のリスクが高まり炎症の原因になります。また、糖質を食べすぎて血糖値が高くなると毛根に炎症や活性酸素を発生させるため育毛によくありません。
ビタミン類
薄毛対策のマルチビタミンについて単独の記事にもしてありますがここでも再度解説していきます。
ビタミンA
過剰ビタミンAは薄毛になる可能性が指摘されています。ビタミンAをサプリメントで過剰に摂取した結果として薄毛が生じる可能性があります。
ビタミンC
ビタミンCが不足すると巻き毛になります。
ビタミンD
ビタミンD不足は女性の薄毛の人に多く女性型脱毛症との関連があります。ビタミンDが結合することによるビタミンD受容体の活性化は毛が太く長く成長する『成長期』が開始する際に必要なビタミンです。
ビタミンE
ビタミンEは強力な抗酸化物質です。ビタミンEのサプリメントを毎日100 mg摂取すると髪の毛の数が増えます。
ただ、過剰なビタミンEのサプリメントを摂取すると出血しやすくなり、甲状腺ホルモン産生を減少させるため注意が必要です。女性の薄毛には甲状腺ホルモンが関係しています。
葉酸
葉酸(ビタミンM、ビタミンB9)は赤血球やヘモグロビンの産生に関与しており、酸素を髪の毛に運んでくれます。酸素がないと細胞が呼吸できないので育毛には有効なビタミンと言えます。より多く葉酸を摂取すると、毛の根元にある細胞の再生を刺激し抜け毛を防いだり、白髪を防いだりする作用があります。
パントテン酸
パントテン酸(ビタミンB5)は毛の根元の細胞分裂に関わっており正常に髪の毛を成長をさせ、潤いを与え、抗炎症作用もあります。また、メラニン形成を促進して白髪を防ぎ、本来の髪の色を回復する作用があります。
ビオチン
ビオチン(ビタミンB7、ビタミンH)は、脂肪やタンパク質の代謝に関与するビタミンです。ビオチンの不足は脱毛につながる可能性がありますが、腸内細菌が適切なレベルのビオチンを産生することができるので、ビオチン欠損はまれです。
ただ、抗生物質による胃腸の細菌叢の破壊でビオチン不足が起こることがあります。ビオチンは皮脂分泌を低下させ、髪の成長を活性化させます。
ナイアシン
ナイアシン(ビタミンB3)が不足すると薄毛になります。
微量ミネラル
不足するとハゲる微量ミネラルについても単独の記事にしてありますが再度解説します。
亜鉛
亜鉛の欠乏は毛の成長を抑制し、休止期脱毛を起こし抜け毛になることがあります。
亜鉛が不足すると毛が抜けるのを待つだけの休止期の期間が増えて薄毛になります。菜食主義者はでは、普通より多くのマメ科植物および全粒粉を食べる傾向があります。マメ科に多く含まれている『フィチン酸』は亜鉛に結合して吸収を抑制するため薄毛になる可能性が高まります。
鉄
鉄の不足は男性型脱毛症(AGA)、円形脱毛症、休止期の脱毛のような薄毛と関連しています。鉄はDNAを作る際に必要なミネラルで活発に毛包に毛を作らせるには鉄が必要になります。
閉経前の女性は、月経血で鉄分が失われるため薄毛のリスクが高まります。また、菜食主義者は肉を食べる人より鉄の摂取量が1.8倍高いと考えられるため鉄不足になりやすいで。これは植物に含まれる鉄は、肉や魚に見られる鉄分よりも体で利用しにくいためです。
銅
銅は毛髪のケラチン繊維の強度と弾力性を高めるのに必須の栄養素です。
セレン
セレンは抗酸化作用で毛包を守り甲状腺ホルモン産生などを行います。セレンが欠乏しているラットは毛が薄くなります。実際、女性の薄毛は甲状腺ホルモンが関係していることが知られています。
セレンの過剰摂取も逆に脱毛症をもたらす可能性があるため注意です。
シリコン
シリコンは毛を成長させ、さらに毛の輝きが増します。
マグネシウム
マグネシウムは炎症を緩和するため抜け毛予防に有効なミネラルです。
カルシウム
髪の毛の中のカルシウムの濃度は血液中のカルシウム濃度を大きく超えていますのでカルシウムは髪を適切な状態に保つのに大切なミネラルです。
ポリフェノール
緑茶
緑茶は私も冷蔵庫に常備してのどが乾いたらすぐ飲めるようにしていますが、緑茶に含まれるフラボノイドは毛包を刺激し毛周期の成長期を延ばしますので薄毛対策にもなっています。
イソフラボン
大豆に含まれるイソフラボンなどの植物エストロゲンは更年期を遅らせ更年期障害を軽減する作用があります。
サプリメント
ハゲ対策のサプリには先ほど挙げた微量ミネラルやタンパク質、ノコギリヤシなどのハーブが配合されている商品が目立ちます。
Zn、Cu、Fe、ビタミンA、D、E、ナイアシン、B12、ビオチンを含むサプリメントが育毛目的で使われています。オルトケイ酸は毛髪の引っ張り強さと太さを増加させて強くします。L-システインと酵母とパントテン酸と併用すると、毛を長く太くする『成長期』の割合が増えます。
【参考文献】