髪の毛の成長に必要なのが亜鉛をはじめとした微量ミネラルです。これらのミネラルは不足しても薄毛になりますが摂りすぎても毒になります。そのため自分がどのミネラルが不足しているのかを血液検査や毛髪検査でモニターして適切な量の不足分を補いましょう。それでは髪の毛の成長に不可欠な微量ミネラルについて医学論文で検証していきましょう。
亜鉛(Zn)
亜鉛が足りなくなると髪の毛の成長サイクル『毛周期』の『休止期』が増えます。ハゲの原因はこの休止期の髪の毛が増えるため抜け毛や産毛が増えて薄くなってくるのです。
『豆』をよく食べる人や『全粒粉』のパンやパスタを食べる人は亜鉛が不足しがちです。なぜかというと、豆や全粒粉に含まれる『フィチン酸』は亜鉛と結合して亜鉛の吸収が悪くなるのです。ですのでもし毛髪検査で亜鉛が不足していたらサプリも薄毛対策になると考えられます。検査が必要と言っているのは亜鉛が髪の毛に良いからといってサプリを飲んでいると過剰になって逆に貧血や銅不足になるので逆にハゲる原因となるからです[3]。
また、女性の薄毛の原因の一つに『甲状腺ホルモン』が低下しているということがあるのですが、甲状腺ホルモンが低下すると亜鉛が吸収されにくくなります[4]。亜鉛や銅、セレンは甲状腺ホルモンを合成するのにも必要なので不足すると薄毛との関連が強いのが亜鉛なのです。
鉄(Fe)
ミネラル不足には鉄不足が多いと言われています。鉄は髪の毛や皮膚といった細胞分裂が盛んな部位で多く必要になるミネラルです。亜鉛と同様に鉄が不足しても先ほど説明した『毛周期』の休止期が増えて薄毛になります。女性は月経があるため鉄不足になりやすく、鉄不足による薄毛には注意が必要です。
女性以外では菜食主義者で肉や卵も食べない人は鉄が不足しやすいです。実は野菜と肉・魚に含まれる鉄は違っておりまして、野菜に含まれている鉄よりも肉や魚に含まれている鉄は人間の体の中で利用しやすい形になっているのです。野菜の鉄は約半分程度しか体内で利用されません。
銅(Cu)
銅は髪の毛を太くコシのある髪に成長させるために必要なミネラルです。また、先ほども述べましたが甲状腺ホルモンを合成するのにも必要なため銅が不足することでも薄毛の原因になります。
セレン(Se)
セレンも甲状腺ホルモンを合成するのに必要なミネラルです。実際にセレンが不足するとラットの毛が薄くなったという実験結果もあります。他のミネラルと同様、セレンの摂りすぎは逆に薄毛になるのでサプリで長期に摂取するのは血液や毛のモニタリングをしながらやりましょう。
また、セレンは抗酸化力が強いミネラルですので男性型脱毛症の毛乳頭の炎症や活性酸素を軽減してくれる効果も考えられます。
セレンを多く含む食材には以下のようなものがあります。
パン、穀物、肉、レバー、魚(タラ、ツナ缶)、卵、牛乳/乳製品に多く含まれます。
シリコン(Si)
シリコンは野菜にシリコン酸として含まれていて髪の毛のつやを出し、さらに成長にも関わっています。
余談ですがシリコンとシリコーンは異なり、よくシャンプーでシリコン不使用と謳っているものは合成されたシリコーン化合物のことですので、正確にはシリコンではなくシリコーン不使用と記載すべきです。
シリコンは穀物中にシリコン酸の形で食品に含まれています。シリコンを多く含む食材には以下のようなものがあります。
ニンニク、チーズ、シーフードの全粒粉食品(グリット、米、オートミール、ふすま、全粒粉パン)に多く含まれます。
マグネシウム(Mg)
マグネシウムも炎症を抑える働きがあります。肥満の人はマグネシウムが不足しがちで、炎症レベルが高く常に血中の活性酸素レベルが上がっていますが、抗炎症作用に使われるためマグネシウムが不足して足りない状態でもあります[5]。
つまりマグネシウムもセレン同様に抗酸化、抗炎症を持っているため薄毛にも有効ということです。先ほどものべたように薄の人の頭皮では毛母細胞周辺の炎症と活性酸素レベルが上がっていることがあります。
マグネシウムが多く含まれる食材には以下のようなものがあります。
カカオ、グリッツ、全粒粉パン、ナッツ、マメ科植物に多く含まれます。
カカオにはマグネシウムだけでなくポリフェノールが豊富にあるため手元にカカオ含有率85%以上のチョコレートを机に常備して気が向いたらかじっています。
カルシウム(Ca)
意外と大事なのがカルシウムです。実は髪の毛には血液を超える濃度のカルシウムが含まれています。ですのでカルシウム不足は髪の毛の成長に必要ということがわかります。
カルシウムを多く含む食材には以下のようなものがあります。
乳製品、大豆、パセリの葉、ヘーゼルナッツ、白豆、ケール、クルミ、魚、キャベツに多く含まれます。
【参考文献】
- Nutrition of women with hair loss problem during the period of menopause. Goluch-Koniuszy ZS et al., Prz Menopauzalny. 2016 Mar;15(1):56-61. doi: 10.5114/pm.2016.58776. Epub 2016 Mar 29.
- [Zinc is the most important trace element].[Article in Danish] Muhamed PK et al., Ugeskr Laeger. 2014 Mar 3;176(5). pii: V11120654.
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