薄毛や禿げが再度回復できない限界はあるのか?

M字薄毛(ハゲ)

アンドロゲン(男性ホルモン)が原因で髪の毛が薄くなるのは男性も女性にも認められる薄毛の現象です。通常の毛包は成長期と休止期を繰り返して再成長するサイクルがありますが、かなりハゲが進行している人の頭皮は一見、毛穴など見当たらないためいつかは毛包が再生しないときがくるのではないかと思う人も多いのではないでしょうか?

毛周期

今回は毛包が休止期から再度成長期へと入り、毛包が大きくなってくれるには限界があるのかどうかについて医学論文で調べてみました。

休止期はバルジ領域まで毛包が縮小する

毛包が休止期から成長期に再生する際にいったん毛包が縮小することになるのですが、どこまで縮小するかというと立毛筋が付着しているバルジ領域のところまで小さくなります。実はバルジ領域には髪の毛や皮膚の元になる幹細胞が固まっているため、毛乳頭細胞になるべく再度バルジ領域から毛の根元の方へと降りていきます。もし詳しく知りたい場合は私の皮膚をテーマとしたブログに書いてありますのでご参考になさってください。

毛の成長の仕組み

毛の成長は上に伸びるだけでなく下にも伸びていきます。この記事では毛の成長サイクルを医学論文を参照しながら考察していくことにします。毛の成長サイクルまず一般的に毛の成長サイクルは3つの状態に区別されます①『成長期・anagen』、②『退行期・

AGAでは立毛筋が壊され毛包に付着しなくなる

さて、この立毛筋は一端をバルジ領域に、もう一端が上皮基底膜に付着しています[1]。アンドロゲンが関与する脱毛症(AGA)では男性も女性もこの立毛筋が破壊され脂肪組織に置き代わっていきます[2]。初期のAGAでは立毛筋は毛穴から出ている髪の毛すべてについているわけではなく主要な毛包(一次毛包)の毛穴から平均約1.65mmの深さにあるバルジ領域を取り囲んでいます。AGAでは2次、3次毛包には立毛筋が付着しにくくなっていき次第に一次毛包にも立毛筋が付着しにくくなっていきます[3]。下の図はこのことを示すシェーマになります。

立毛筋が毛包から離れてしまう様子 Sinclair R et al.[3]

立毛筋が毛包と接触しないと毛包は縮小する

立毛筋が毛包に付着しなくなってしまったら毛包が再生されないことが示唆されています[3][4]。この背景として立毛筋という間葉由来の組織と毛包という上皮由来の組織が接触することが髪の毛の再生に必要と考察している報告もあります[3]。

実際、円形脱毛症の毛包は立毛筋の付着のロスが起こらないため毛包が再度成長を遂げることが可能なのです[4]。一方のAGAでは立毛筋の付着が失われて毛包の縮小が止まらないことが観察されています。

髪の毛や歯の再生もそうなのですが上皮由来細胞と間葉由来細胞の接触が必須であることが分かっていますので髪の毛が頭皮で再度成長期に入るために立毛筋と毛包との接触が必要だという仮説も理解しやすいものだと考えています。毛包の再生医療について以前記事を書いていますので興味がある方は読んでみてください。

髪の毛の再生医療について

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バルジ領域の幹細胞が枯渇しても髪の毛は増えない

髪の毛の元となる幹細胞が活性酸素による老化やコラーゲン繊維の破壊などで数が減っていくと毛母細胞に変わる幹細胞が減るため当然、髪の毛は薄くなります。もし幹細胞が全く枯渇して休止期になるともう髪の毛を再度成長させるための細胞がなくなるわけですから薄毛が回復する限界と考えられます。この髪の毛の幹細胞に関してもっと詳しく知りたい方はこの記事がお役に立つでしょう。

幹細胞が老化すると薄毛になるのか?
そもそも髪の毛はどうやって生えてくるのでしょうか?実は髪の毛も皮膚と同様に髪の毛の元となる細胞(幹細胞またはバルジ細胞)があり髪の毛...

まとめると、アンドロゲン(男性ホルモン)で髪の毛が抜けるAGAでは立毛筋が毛包から離れてしまったら再度成長期に入ることが難しくなることが示唆されているということです。また、当然ですが髪の毛を再度成功させる細胞自体が枯渇してしまうと薄毛の回復は難しいことがうかがえます。つるつるの頭皮は皮脂だけでなく毛穴が縮小しきった結果なのかと推測されますね。

【参考文献】

  1. The arrector pili muscle, the bridge between the follicular stem cell niche and the interfollicular epidermis. Torkamani N et al., Anat Sci Int. 2017 Jan;92(1):151-158. Epub 2016 Jul 29.

  2. Destruction of the arrector pili muscle and fat infiltration in androgenic alopecia. Torkamani N et al., Br J Dermatol. 2014 Jun;170(6):1291-8. doi: 10.1111/bjd.12921.

  3. Androgenetic alopecia: new insights into the pathogenesis and mechanism of hair loss. Sinclair R et al., F1000Res. 2015 Aug 19;4(F1000 Faculty Rev):585. doi: 10.12688/f1000research.6401.1. eCollection 2015.

  4. Miniaturized Hairs Maintain Contact with the Arrector Pili Muscle in Alopecia Areata but not in Androgenetic Alopecia: A Model for Reversible Miniaturization and Potential for Hair Regrowth. Yazdabadi A et al., Int J Trichology. 2012 Jul;4(3):154-7. doi: 10.4103/0974-7753.100069.