幹細胞が老化すると薄毛になるのか?

そもそも髪の毛はどうやって生えてくるのでしょうか?実は髪の毛も皮膚と同様に髪の毛の元となる細胞(幹細胞またはバルジ細胞)があり髪の毛の細胞に分化していき髪の毛になっているのです。一般に男性ホルモン(アンドロゲン)による薄毛が主な原因なのですが、加齢とともに薄毛が増えていくのは男性ホルモンによる薄毛(AGA)だけではなく、髪の毛の元となる幹細胞が老化して増えなくなっていくこともハゲになる原因です。

髪の毛の幹細胞は毛穴から浅い部位に固まっている

それでは髪の毛の元となる幹細胞はどこにあるのでしょう?実は表面から非常に浅い1ミリ~2ミリの毛穴にあり、ここには立毛筋が付着しているためふくらみがあるバルジ領域と呼ばれていますが近年このバルジ領域に髪の毛の幹細胞が固まって存在していることが判明しました。

このように浅い部位に抜け毛や薄毛の回復のカギとなる幹細胞があるということは、髪の毛の健康は、従来考えられていたよりも生活習慣の影響を受けるということです。例えば女性より男性、顔の皮膚より頭皮のほうが毛穴が大きいためシャンプーや化粧品類に含まれるSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)などの合成界面活性剤による活性酸素の影響をもろに受け薄毛の原因になると考えられます。

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また、空気中を浮遊している活性酸素源となる微粒子により髪の毛の幹細胞が老化の影響を受けることが考えられます。

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私が専門医でもあるアンチエイジング医学はこのような年齢以上に老化させる要因は取り払うことで年齢相応の見た目や健康寿命をのばす科学です。老化の観点からはなるべく皮膚や髪の毛につける合成界面活性剤を生活から減らしていくことで薄毛や皮膚の老化を最小限にすることができることもわかりますし、大気の目に見えない汚染物質が皮膚や髪の毛を老化することも科学的にわかりますので即できることを実践しています。

活性酸素で幹細胞は分裂しなくなり老化細胞となる

さて髪の毛に話を戻しますがバルジ幹細胞に活性酸素が増えるとDNAに傷がついてしまいます。老化に興味がある人なら一度は『活性酸素は老化の原因』と聞いたことがあると思います。活性酸素は紫外線や合成界面活性剤などの毒物で増えて細胞のDNAにダメージを与えますが、細胞分裂能を持っている幹細胞のDNAに傷がつくと細胞分裂の周期を止めてしまいます。DNAの修復が完了すると再開しますがそのまま永久に止まってしまう細胞も増えてきます。こうして永久に細胞分裂しない幹細胞、つまり老化した細胞そのもの、がバルジ領域の幹細胞に増えていくことになります。

ちなみに髪の毛の幹細胞だけでなく皮膚の幹細胞や真皮にも幹細胞がありますが、これらが活性酸素で老化して分裂しなくなるのが加齢した皮膚の特徴でもあります。

このように老化して分裂しなくなった幹細胞はその後も長く生き続けますが、分裂能がある細胞と異なる特徴をもっており、周囲の健康な細胞まで老化を加速させています。

幹細胞周囲のコラーゲン繊維が破壊されると幹細胞は垢として死んでいき薄毛や白髪が増える

さらに老化した細胞はSASP現象といって通常の細胞とは異なり、老化の原因となる炎症性サイトカインやコラーゲン繊維を破壊するMMPなどのプロテアーゼ、炎症細胞誘導能など周囲の細胞の老化を加速する物質を分泌するようになります。その結果、炎症は活性酸素を生み、MMPやエラスターゼなどは幹細胞を維持する微小環境(ニッチ)を破壊するため髪の毛が生え変わる際に必要な幹細胞が毛包の方に移動せず上皮の方に移動して垢として剥がれ落ちていくことが報告されています[1]。

垢として剥がれ落ちて幹細胞が少なくなっていくと髪の毛が細くなり白髪が増えることになります。

このように髪や皮膚の幹細胞を活性酸素から守ることは薄毛やハゲを防止するために大切な生活習慣です。まず日常生活から活性酸素を頭皮に発生させる習慣をできることから減らしていきましょう。私は老化の科学知識が高じて自分で無添加の基礎化粧品を開発しましたが、合成界面活性剤を使わない石鹸ベースのクレンジングソープで顔と髪を洗っています。風呂上りに櫛を通すと髪の毛が太くなったと実感しています。

もし老化の科学に基づいたエイジングケア基礎化粧品に興味がありましたらオーソブルームで検索してみてください。リンクも一応載せておきます。

『いつまでも顔やスマイルを健康で美しく保ってほしい』年齢以上の老化をしたくない人のために老化の医学に基づいて開発した無添加エイジングケア基礎化粧品『オーソブルーム™』公式サイト

まとめると、老化細胞の増加に伴い慢性炎症がちになることでエラスターゼやコラゲナーゼが増えると毛穴周囲のコラーゲン繊維が壊されていく。コラーゲン繊維が壊されていくと髪の毛の元となるバルジ幹細胞は毛根の方向ではなく上皮の方向に移動して髪の毛が薄くなっていく。髪の毛を増やすためには老化細胞を増やさず活性酸素を発生させない洗髪が大切だということです。

【参考文献】

  1. Hair follicle aging is driven by transepidermal elimination of stem cells via COL17A1 proteolysis. Matsumura H et al., Science. 2016 Feb 5;351(6273):aad4395. doi: 10.1126/science.aad4395. Epub 2016 Feb 4.