ビタミンC誘導体は薄毛に効果があるのか?

皮膚では紫外線や大気中の微粒子による活性酸素の放出を減らすためビタミンC誘導体の塗布が老化を防ぐのに有効です。そこでビタミンCの抗炎症・抗酸化作用で美容液に含まれるビタミンC誘導体が薄毛防止にも効果があるのか興味がわきましたので医学論文で調べてみました。以前紫外線とハゲの関係について記事を書きましたので興味がある方はご参照ください。

日光にあたるとハゲるのか?
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アンドロゲン受容体とDHT結合で放出される物質DKK-1

最も一般的な禿げである『男性型脱毛症(AGA)』は男性ホルモンがジヒドロテストステロン(DHT)に変わりアンドロゲン受容体に結合すると毛包が縮小するフェーズ(休止期)に移行して薄毛や抜け毛が起こる現象です。

毛周期

このDHTがアンドロゲン受容体に結合するとさまざまな物質が放出され自らの細胞や周囲の細胞に信号を送ることが知られています[2]。そのなかの一つdickkopf-1(DKK-1)という物質があります。このDKK-1は毛乳頭細胞を細胞のプログラム死であるアポトーシスに導くためハゲの原因となります。

ビタミンC誘導体はDKK-1を抑制しIGF-1を増やすためAGA対策になる

市販の基礎化粧品で使われているビタミンC誘導体の一つアスコルビン酸2リン酸はこのDHTが誘導するDKK-1の発現を抑制する効果が報告されています[2]。さらに、ビタミンC誘導体はIGF-1の分泌を促進させ髪の毛の成長を促進する効果があることも報告されています[3]。IGF-1は通常深夜に深い眠りに入っていると脳下垂体から成長ホルモンが分泌されて肝臓でIGF-1に変わって皮膚や髪の毛の細胞増殖をします。ですのでよく寝る人は肌が綺麗だと言われるのです。ですがこの成長ホルモン/IGF-1は出すぎると寿命が短くなることが分かっていて全身性にIGF-1を無理に増やすことは危険です。そのため寿命に影響を与えず髪の毛だけを増やすためにビタミンC誘導体を外用育毛剤として直接頭皮に塗ることが有効になります。

ビタミンCはコラーゲン繊維を増やす

皮膚でビタミンC誘導体を塗る理由の一つが真皮のコラーゲン繊維を増やしてハリを回復させるというものです。コラーゲン繊維は髪の毛が増えるためにも必要な要素で、毛包周囲、特に髪の毛の元となる幹細胞周辺のコラーゲン繊維が減ると髪の毛の成長が阻害されます。ですので外出時に紫外線や大気汚染物質などで活性酸素を増やしてコラーゲン繊維を溶かすMMPなどの酵素の影響を抑制するためにビタミンC誘導体の塗布は薄毛対策になると考えられます。

空気中を浮遊している大気汚染微粒子で薄毛になるか?
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ビタミンC誘導体の抗酸化・抗炎症作用

ビタミンCは代表的な水溶性の抗酸化物質で抗炎症作用も併せ持っています。AGAの人の毛包周囲は炎症や活性酸素レベルが上がっていますし、髪の毛の元となる幹細胞が活性酸素や炎症で減って老化していくのを防ぐ効果が期待されますのでビタミンCが毛包周囲で増えることは禿げ防止になると考えられます。

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まとめると、男性型脱毛症ではアンドロゲン受容体にDHTが結合することでDKK-1という毛乳頭細胞を減らす物質が分泌されるがビタミンC誘導体はDKK-1を抑制してくれる。さらにビタミンC誘導体の塗布で頭皮にIGF-1を増加させ髪の毛を成長させる効果があるため、ビタミンC誘導体を頭皮に塗ることはAGA対策になるということです。また、ビタミンCはコラーゲン繊維を増やし、抗酸化作用と抗炎症作用をもっているため髪の毛が成長するのに良い影響を与えると考えられます。

【参考文献 】

  1. Dihydrotestosterone-inducible dickkopf 1 from balding dermal papilla cells causes apoptosis in follicular keratinocytes. Kwack MH et al., J Invest Dermatol. 2008 Feb;128(2):262-9. Epub 2007 Jul 26.

  2. L-ascorbic acid 2-phosphate represses the dihydrotestosterone-induced dickkopf-1 expression in human balding dermal papilla cells. Kwack MH et al., Exp Dermatol. 2010 Dec;19(12):1110-2. doi: 10.1111/j.1600-0625.2010.01143.x.

  3. l-Ascorbic acid 2-phosphate promotes elongation of hair shafts via the secretion of insulin-like growth factor-1 from dermal papilla cells through phosphatidylinositol 3-kinase. Kwack MH et al., Br J Dermatol. 2009 Jun;160(6):1157-62. doi: 10.1111/j.1365-2133.2009.09108.x. Epub 2009 Mar 26.