育毛シャンプーで逆に薄毛になることはある?注意すべき成分について

ネットを調べているとある有名な『育毛』シャンプーで抜け毛が増えたという記事を見かけました。この記事ではなぜ有名な市販の育毛シャンプーを使っているにもかかわらず抜け毛が増えたり薄毛になるのか科学的に検証してみましょう。

まずそのシャンプーの育毛有効成分と薄毛になる成分に分けて検証してみます。

ある育毛シャンプーの有効成分

ある薬用『育毛』シャンプーを調べてみましたが『グリチルリチン酸ジカリウム』が有効成分として配合されています[3]。グリチルリチン酸ジカリウムは甘草(カンゾウまたはリコリス)に含まれる抗炎症成分です。リコリスは甘味があるためクッキーなどのお菓子にもに使われています。

薄毛の原因には毛乳頭周囲の炎症や活性酸素レベルの増加がありますので抗炎症作用がある成分は薄毛対策となります。

毛穴構造

ある育毛シャンプーの薄毛に寄与する成分

今度は薬用『育毛』シャンプーの成分のうち、薄毛になる可能性がある成分を見ていきましょう。

合成界面活性剤による薄毛・抜け毛作用

薬用『育毛』シャンプーには『ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム液』、『ラウレス硫酸Na』、『ラウリルヒドロキシスルホベタイン液』が含まれています[3]がこれらはすべて合成界面活性剤です。

合成界面剤は食器用洗剤をはじめシャンプーやクレンジング液、クリームや乳液まで広く使われている成分ですが、皮脂などの油を取り除く力が強く皮脂を根こそぎ落としていきます。皮脂がいきなりなくなると毛穴は「皮脂が足りないからもっと作らなきゃ!」と皮脂をさらに多く作り出します。そのため頭皮が油ぎってベタベタになってくる原因になっています。

頭皮が油ぎっていると薄毛の原因になる?

合成界面活性剤の代表であるラウリル硫酸ナトリウムなどはネズミの実験でも昔から皮膚バリアを壊して乾燥肌を使う実験で使われてきた試薬であることはあまり一般に知られていないのが面白いと思います。油汚れだけを落とすなら合成界面活性剤も効率的で良いでしょうが頭皮や皮膚に使うならハゲや乾燥肌などの老化現象を加速するため、薄毛の人が使うシャンプーの成分としては合成界面活性剤はありえない成分だと知っておきましょう。

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合成界面活性剤は皮膚や頭皮から最大で6mm程度も浸透し細胞毒性があることが一般的に知られています。合成界面活性剤は石けんでできた洗剤と異なり水道水中のミネラルで界面活性作用が失われません。そのため毎日使用していると頭皮に活性酸素が増え頭皮の厚みも薄くなり髪の毛が十分に発育できないため薄毛になっていきます。

さらに髪の毛の根本にある細胞『毛乳頭』の細胞を補給している髪の毛の元となる『幹細胞』は毛穴からわずか1~2mmの浅い部分にあり『バルジ領域』と呼ばれています。頭皮の毛穴は皮膚と比べても特大サイズですので容易に合成界面活性剤の毒性で幹細胞がダメージを受けます。さらに女性とくらべ男性のほうが毛穴が大きいため特に男性はシャンプーやリンスなど頭皮につけるものの成分に注意しないと年齢以上に薄毛を加速することになります。

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エタノールによる薄毛

薬用『育毛』シャンプーには『エタノール』が含まれています。エタノールなどのアルコールは植物エキスを抽出する際に『キャリーオーバー』成分として微量がふくまれることがあります。しかしエタノールなどのアルコールをあえて加えると薄毛の原因になってきます。

エタノールは皮膚バリア機能を壊して浸透していく能力があるため毛穴の内部で炎症を起こし薄毛を引き起こす可能性があります[1][2]。

パラベンなど合成防腐剤による薄毛

多くの薬用『育毛』シャンプーには『パラベン』が含まれています。パラベンなどの合成防腐剤や抗菌剤は日常生活で多用していると頭皮の免疫力が弱まる恐れがあります。

これは頭皮には様々な種類の細菌が住んでおりパラベンによって耐性菌などの性質が変化した細菌が発生するためです。炎症を引き起こす常在菌にはアトピーの原因ともいわれている黄色ブドウ球菌やマラセチア菌があります。このような悪玉菌が頭皮で性質が変化し繁殖すると炎症がおきてハゲる原因になります。

また、パラベンなどの合成防腐剤は頭皮や皮膚から浸透して尿から排泄されるため全身を巡っているのですが、尿中のパラベンの量と体内の炎症と活性酸素レベルの高さには相関があることが知られています。つまり頭皮でも炎症や活性酸素が増やすことになるため抜け毛や薄毛を増やしている成分と考えられます。

つまり市販の『育毛』シャンプーで逆に薄毛や抜け毛が増えたと感じる場合は抗炎症成分や育毛効果が期待できる成分よりも合成界面活性剤や合成防腐剤などの炎症と活性酸素でハゲになる可能性がある成分が圧倒的に多く含まれていることが原因と考えます。

【参考文献】

  1. Absorption of ethanol, acetone, benzene and 1,2-dichloroethane through human skin in vitro: a test of diffusion model predictions. Gajjar RM et al., Toxicol Appl Pharmacol. 2014 Nov 15;281(1):109-17. doi: 10.1016/j.taap.2014.09.013. Epub 2014 Oct 2.
  2. In vitro anti-inflammatory effects of hyaluronic acid in ethanol-induced damage in skin cells. Neuman MG et al., J Pharm Pharm Sci. 2011;14(3):425-37.