ハゲを防止する治療薬成分には5αリダクターゼを阻害するフィナステリドをはじめとする有効な成分がいくつかありますが、今回紹介するFGF-5を阻害する物質も薄毛対策の効果が期待できる薬効を持った成分の一つです。
薄毛の毛周期の特徴
まず正常な髪の毛の成長サイクル(毛周期)を確認してみます。髪の毛がフサフサの人の頭皮では、毛包の約90%が成長期にあり、1%が退行期で、9%が休止期にあります。また、加齢とともに成長期の毛包の割合は低下してきます[1]。
逆にハゲている人の毛では、発毛周期に偏りが生じていて、発育期が短縮し、脱毛/休止期の毛髪の割合が増加しています[1]。
育毛剤の有効成分FGF-5阻害剤
FGFは繊維芽細胞の増殖因子でいくつか種類があります。そのFGFのうち、『FGF-5』が薄毛と関係があります。先ほども述べたように薄毛を防ぐには毛周期の成長期の期間をのばし、休止期を短くしてなるべく早く成長期になるようにすることです。
また、FGF-5は成長期の後期に増えることが報告されています[1]。つまり、FGF-5は成長期から退行期への移行に関与しており毛包の退縮を誘導するということで[2]、このFGF-5を阻害する育毛成分があれば薄毛を改善できることになります。
育毛成分『モノテルペノイド』はFGF-5を阻害する
バラ科の植物『ワレモコウ』の根のエキスはFGF-5を阻害します。
ワレモコウの根には多くの『モノテルペノイド』が含まれています。植物由来のモノテルペノイド化合物は、抗炎症および抗菌活性、増殖調節および抗腫瘍作用を含む薬理学的特性があることが知られています。モノテルペノイドをヒトの頭皮に塗布した実験では脱毛の減少、髪密度の有意な改善、休止期よりも成長期の毛の数が増えました[1]。特定のモノテルペノイドだけでなく、ワレモコウエキスに含まれる多くのモノテルペノイドがFGF-5を阻害することが報告されています。
【参考文献 】
- Promotion of anagen, increased hair density and reduction of hair fall in a clinical setting following identification of FGF5-inhibiting compounds via a novel 2-stage process. Burg D et al., Clin Cosmet Investig Dermatol. 2017 Feb 27;10:71-85. doi: 10.2147/CCID.S123401. eCollection 2017.
- FGF5 is a crucial regulator of hair length in humans. Higgins CA et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Jul 22;111(29):10648-53. doi: 10.1073/pnas.1402862111. Epub 2014 Jul 2.