薄毛を隠す黒い粉(ふりかけ)とは?

薄毛の人が薄毛を隠すために黒い粉を吹き付けているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか。著者が所属している日本抗加齢医学会でも商社展示でデモをやっていた時があり傍らから見ていましたが面白いように地肌が見えなくなりびっくりしますよね。

この通称『ふりかけ』と呼ばれる黒い粉。今回はこの黒い粉はどういうものか?頭皮への悪影響や薄毛を促進しないか?などを医学論文で考察してみたいと思います。

薄毛に使う黒い粉の成分

あの『黒い粉』はどうやって薄毛を隠すのでしょうか?黒い粉には『タルク』という滑石の微粒子が入っています。タルクは白から灰色までさまざまな色があります。さらに薄毛を隠す黒い粉にはタルクの他に、微小な黒い炭(カーボンブラック)も含まれています。これらの不透明で黒い微粒子を薄くなった産毛に吹き付けることで髪の毛1本1本を太くして目立たなくしているのです。これは面白い発想ですし薄毛を隠すにはとても便利なものだと思います。

しかしシャンプーと同じで汚れが簡単に落ちることの裏にハゲのリスク隠れていることがあるため、この黒い粉もハゲるリスクがないか調べてみることが必要です。

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薄毛に使う黒い粉のリスク

先ほど説明したタルクや炭は大気汚染で有名なPM2.5と同じマイクロレベルの微粒子で、このような微粒子は肺の奥深くで炎症を起こし血液中の活性酸素レベルを上げます[1][2]。タルクや炭は異物ですので体内に入ると必ず炎症が起こり活性酸素が発生します[3]。特に炭素の微粒子(ブラックカーボン)は発がん性が指摘されていて皮膚がんの原因となっています[4][5]。

もしこの黒い粉を使用する場合には周囲にまき散らさないこととなるべく頭皮や皮膚に付着しないように使うことで薄毛や皮膚がんになってしまうリスクを減らすことができます。

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薄毛の人の毛根では活性酸素レベルが増えており、その活性酸素が毛を作る細胞にダメージを与えて薄毛になっていますので黒い粉を使う方は周囲の人にまき散らして微粒子を吸わせないよう注意してください。

また、頭皮の毛穴は皮膚などと比べて特大サイズですので毛穴からも容易に入ることになります。これは毛を増やす幹細胞に活性酸素ダメージが加わることを意味し、抜け毛や白髪も増えていき薄毛になる原因です[5]。この髪の毛の幹細胞は毛穴からわずか1~2mm程度の浅い部位に固まって存在していることが判明しており、近年、合成界面活性剤や合成防腐剤などの活性酸素源による薄毛の懸念が強くなっています。

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また、タルクにはアスベスト(石綿)が不純物として含まれていることがあります。アスベストは肺のがん『中皮腫』の原因です。現在、日本では化粧品で使用されているタルクはアスベストは検出されないと思いますが本来タルクはアスベストが含まれやすい天然鉱物なのだということは知っておいた方がいいでしょう。

【参考文献】

  1. Inhalation of Talc Induces Infiltration of Macrophages and Upregulation of Manganese Superoxide Dismutase in Rats. Shim I et al., Int J Toxicol. 2015 Nov-Dec;34(6):491-9. doi: 10.1177/1091581815607068. Epub 2015 Oct 19.
  2. Small particle-size talc is associated with poor outcome and increased inflammation in thoracoscopic pleurodesis. Arellano-Orden E et al., Respiration. 2013;86(3):201-9. doi: 10.1159/000342042. Epub 2012 Sep 27.
  3. Is androgenetic alopecia a photoaggravated dermatosis? Trüeb RM Dermatology. 2003;207(4):343-8.
  4. Air pollution and skin diseases: Adverse effects of airborne particulate matter on various skin diseases. Kim KE et al., Life Sci. 2016 May 1;152:126-34. doi: 10.1016/j.lfs.2016.03.039. Epub 2016 Mar 25.

  5. Air pollution and skin diseases: Adverse effects of airborne particulate matter on various skin diseases. Kim KE et al., Life Sci. 2016 May 1;152:126-34. doi: 10.1016/j.lfs.2016.03.039. Epub 2016 Mar 25.