髪の毛をふやしてハゲを改善する方法には非侵襲的なミノキシジルやフィナステリド錠などの薬剤を使って時間をかけて薄毛を治していく方法と手術で一気にハゲを改善する方法の2つに大きく分けられます。
しかし従来の毛髪の移植手術は後頭部の髪の毛を横一文字に短冊状に切り取って毛を一つ一つ移植していく方法が取られていましたが、髪の毛を短くする人は切り取った部位が瘢痕になって目立ってしまうことが問題となっていました。
毛髪移植で瘢痕が目立ちにくい術式FUE法とは
そこで移植するために頭皮を短冊に切り取るのではなくて髪の毛を毛包単位で一個一個取ってきて移植する『Follicular Unit Extraction(FUE)』という方法があります。この方法は短冊に切り取る必要がないため術後に上図のような後頭部に横一文字の瘢痕が残りません[1]。また、移植できる髪の毛が限定的でも髪の毛以外の体毛を使って毛包を移植することも可能にする技術です[3]。
FUEで毛包を摘出するには全部をくりぬくのかと思う人も多いと思いますが、くりぬくのではなく毛穴についている立毛筋をカットすると毛包を引っこ抜くことができます[2]。逆に深く突き刺して取ろうとすると毛包を傷つけることになります。
移植時に摘出毛包に傷がつかないようにすることで発毛率が向上する
毛が毛穴から伸びている方向と毛包の方向が異なります。そのためFUEでは切開を入れる方向は盲目的になるため短冊状に切り取る方法と比べて必然的に毛包を傷つける率が高くなる術式です[2]。短冊状に切り取る方法では毛包が完全に分断されて傷つく(Transection)率は約2%[2]なのに対してFUEは約7.4%[4]と報告されています。毛包が傷つくと移植後の発毛に影響があるためFUEの課題はいかにこの毛包分断率を低くするかです。
毛髪移植におけるロボットの活用
このようにFUEは毛包をひとつづつ患者さんがうつ伏せで寝ている状態で 後頭部から取るので術者にとって負担が大きい手術になります。これを軽減するためにARTAS(アルタス)と呼ばれるロボットが活用されており髪の毛の黒い色を判別してカットしてくれます。ですが毛包を分断する率は6.6%[5]とマニュアルのFUEと比べて若干改善していますが依然として2%には程遠い状態です。
このロボットを活用したFUEに最も適している患者さんは認識できるように髪の毛の色が黒く、45分~120分座っていられる人、広範囲の髪の毛を剃ることに同意できる人とされています[5]。
アルタスを活用したFUEによる毛包採取の動画。
まとめると髪の毛の移植は後頭部に短冊状の移植片を切り取る方法と比べて術後の瘢痕がめだたないFUEという方法がある。FUEは毛包を一つ一つ取って移植するが毛包の方向と毛の方向が異なるため毛包を傷つける率が高くなる。しかも外科医の負担も高くなるため近年はロボットも活用され始めているということです。
【参考文献】
- Follicular Unit Extraction Hair Transplantation with Micromotor: Eight Years Experience. Ors S et al., Aesthetic Plast Surg. 2015 Aug;39(4):589-96. doi: 10.1007/s00266-015-0494-8. Epub 2015 May 7.
- Use of body hair and beard hair in hair restoration. Umar S. Facial Plast Surg Clin North Am. 2013 Aug;21(3):469-77. doi: 10.1016/j.fsc.2013.05.003.
- Various Types of Minor Trauma to Hair Follicles During Follicular Unit Extraction for HairTransplantation. Park JH et al., Plast Reconstr Surg Glob Open. 2017 Mar 16;5(3):e1260. doi: 10.1097/GOX.0000000000001260. eCollection 2017 Mar.
- Robotic follicular unit extraction in hair transplantation. Avram MR et al., Dermatol Surg. 2014 Dec;40(12):1319-27. doi: 10.1097/DSS.0000000000000191.