傷ができると血小板が活性化され丸みを帯びた形に変形して傷の修復を速めます。血小板は核がなく多くの成長因子（ＧＦ）を貯蔵するタンクの役割をしています。医療現場では血小板が豊富な血液を特別に分離して様々な用途に応用されています。歯科や形成外科では顎顔面の外科処置の際に骨の再生を促進させるために使用されてきました[1]。
ＰＲＰは血液を遠心分離すると血漿の底に沈んでいる分画で血小板の密度が非常に高い分画です。血小板には多くの成長因子が含まれているーそこで血小板が多く含まれた血液分画（ＰＲＰ・Platelet-Rich Plasma）を応用すると髪の毛を増やすことができるのではないかと思い科学論文を検証してみました。
男性型脱毛症（ＡＧＡ）に対するＰＲＰの効果
ＰＲＰを毛包に加えると血小板には血管を新しく作る成長因子も含まれているため血管を増やし毛髪の成長を刺激したり、毛の成長サイクルを成長期（anagen）に入らせて成長期を延長する効果で毛を増やす効果があります[2]。
そのためＰＲＰで処置しなかった部位と比べると毛の密度が増加することが報告されています[3]。
ミノキシジルの薄毛改善効果の一つにこの血管の成長因子（VEGF）が増えることがあることからＰＲＰも髪の毛を増やす作用があることがうかがえます。
円形脱毛症（ＡＡ）に対するＰＲＰの効果
円形脱毛症は自己免疫疾患で炎症によって脱毛が起こっており生涯円形脱毛症にかかるリスクは２％とされています[4]。この円形脱毛症には男性型脱毛症と異なり明確な予防法や治療法がない[5]ので患者さんのコンプレックスを改善する治療法が求められています。ＰＲＰの成長因子は円形脱毛症に効かないのか試した報告があり、ＰＲＰ療法で円形脱毛症の毛の成長を改善したとしています[5]。
毛の移植にＰＲＰを応用する
髪の毛の移植において移植片や移植部位にＰＲＰを適用することで毛の成長を改善することが報告されています[6]。その結果、ＰＲＰを用いない毛髪移植と比べて毛包の数の増加と新しく髪の毛が生えてくるまでの時間を短縮しています。
このようにＰＲＰは豊富な成長因子によって傷の修復だけでなく毛の成長を促す効果もあるため薄毛の治療にも有効なのです。しかも作成が容易で安全性が高い生体材料ですので普及したと考えられます。
【参考文献】
- Platelet-rich plasma: Growth factor enhancement for bone grafts. Marx RE et al., Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 1998 Jun;85(6):638-46.
- A Mechanistic Model of Platelet–Rich Plasma Treatment for Androgenetic Alopecia. Gupta AK et al., Dermatol Surg. 2016 Dec;42(12):1335-1339.
- Randomized Placebo-Controlled, Double-Blind, Half-Head Study to Assess the Efficacy of Platelet–Rich Plasma on the Treatment of Androgenetic Alopecia. Alves R et al., Dermatol Surg. 2016 Apr;42(4):491-7. doi: 10.1097/DSS.0000000000000665.
- Alopecia areata. Pratt CH et al., Nat Rev Dis Primers. 2017 Mar 16;3:17011. doi: 10.1038/nrdp.2017.11.
- A randomized, double-blind, placebo- and active-controlled, half-head study to evaluate the effects of platelet–rich plasma on alopecia areata. Trink A et al., Br J Dermatol. 2013 Sep;169(3):690-4. doi: 10.1111/bjd.12397.
- Promotional effect of platelet–rich plasma on hair follicle reconstitution in vivo. Miao Y et al., Dermatol Surg. 2013 Dec;39(12):1868-76. doi: 10.1111/dsu.12292. Epub 2013 Oct 1.